ヨリックの饗宴 五條瑛 

ヨリックの饗宴 ヨリックの饗宴
五條 瑛 (2006/11)
文藝春秋

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★8/10(ネタバレ)

あ、あら? 私がBLに求めてるものがこんな所にあったワ。

濃すぎる血は災いを産む。そして、歪んだ愛情も。その境はあまりにも曖昧で、栄一も和久田も裕之も不完全であるが故に、自分をコントロールできない。

血で血を洗う愛憎劇。なんてたのしい。

似ているがゆえに、それぞれが顔を突き合わせるとまるで磁石の同極同士のように、そこまでしなくてもと思うほど反発し合う。

といいつつ、栄一は耀二にめろめろなんだわ(笑)
やっぱり、そこは兄と弟。
他人には全く関心のない冷たく薄情な兄。
そんな兄が小さい頃から耀二を可愛がり、そして耀二も懐く。
栄一は耀二が可愛くて仕方なかったんだろうなあと想像しただけで、なに、この幸福感は(笑)
耀二も栄一を憎みながらも、兄と同じように鮫皮のキーホルダーを持ち、好んで着た服、持っていた鞄、時計、万年筆、毎日使っていた剃刀までも一つ残らず記憶し、同じように使っている自分がたまらなく厭だった。ってあんた、むしろ耀二の方が病的なくらい兄が大好きだったんじゃないのよ。
万年筆まではいいとして(いいのか)、剃刀まで真似るっていうのがちょっと淫靡じゃないのさ!
まさかこんな所でエロティシズムを感じるなんて。

あの人の周囲は華やかでいつも人に囲まれてるように見えたが、本当は孤独だったのかもしれない。誰もあの人の心の中までは踏み込めなかったからな。鮫皮のキーホルダーと一緒さ。あの人は、自分が真に気に入ったものしか自分の世界に入れない

ここ! ここなのよ!!
そんな栄一の中にいるのが耀二なのよ。
こういうのが好きなの。こういう話がすきなの!(笑)
今ちょうど読み返してる吉田秋生の『BANANA FISH』のアッシュと英二の関係もちょうどこんな感じ。
あさのあつこの『NO.6』のネズミと紫苑もこういうタイプと思うのよね。
栄一と耀二の場合は、兄弟であるがゆえの憎しみというスパイスがプラスされますけども。
色々なものを抱えてる心にするりと入ってくる無垢。
まあ、栄一に限っては生まれたときから『栄一』のままだったように思えるけども(笑)
あ、でも『BANANA』や『NO.6』とはやっぱり少し違うかな。
栄一はナルシストの延長線上に耀二がいるのかもしれない。
そしてその逆の線上に裕之がいる。
耀二は耀二で裕之を虐待した兄が憎いのに、たまらなく愛しい。
兄を憎む裕之の目の前で、自分が兄に対する未練を見せてしまったことに対する罪悪感。
ああ、もどかしくも狂おしい愛!!

栄一が耀二と再会してから、ところどころに耀二を気遣う台詞が結構ある。そこもポイント高いじゃない。
事件が終わってからも、栄一と耀二がたまに会ってるっていう文章で、ハッピーエンドで良かった……と。
私の中では、そこがエンドでした(笑)

最後に耀二は裕之に言うんです。

お前が将来何になるのか、何をするのか分からないが、もし大きな決断をするときがあれば、俺に一言言ってくれないか。相談してくれとは言わない。『決めた』とだけ告げてくれればいいから

耀二の本心はここだと思いました。
裕之を虐待して消えた兄の栄一が憎いと言いつつも、本音は、自分に何も言わずにいなくなった兄を怒る子供じみた我侭が見え隠れしてるように……見えたのよ! 耀二、可愛い!!
まあ、斜にかまえて読めば、兄のせいでこんな酷い目にあって、前もって知ってれば手のうちようがあったのに! とも読めるんですが(笑)
でも、この言葉は、耀二の栄一に対する気持ちだったんだと思うわ。

ヨリックが誰だとか、どういった謎だとかいう感想は書いてませんが、そこらへんの話もモチロン面白かったです。
後半部分にきて、けっこう笑えるヤリトリなんかもあったりして、思わずクスリと。
アレックスがいいツッコミしてくれますから(笑)
あ、悠子がいる時がけっこう笑えるのかもしれない。
悠子、けっこうかっこいいキャラのはずなのに。

「恋人か?」
「ご想像に任せるわ」
「時間ができたら想像してみるよ」


ええー? みたいな(笑)
せっかくもったいつけた悠子の言葉にたいして耀二のつれない切り替えしが好き。

「言っておくけど、あたしはこの二人みたいに手緩くないわよ」
和久田とアレックスは顔を見合わせた。
「オネエサンに比べれば、誰だって手緩いよ」
アレックスは小さな声でぶつぶつ言ってる。


アレックス、ナイスツッコミ。
しかも小さい声でぶつぶつ言うあたり、アレックスの小心さと悠子さんの怖さが窺い知れるってなもんです。

最後に残された謎は、耀二がいったいどんな場所で働いているのかという。
18禁の職場ってどこ?


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