日ぐらし御霊門(櫻瀧) 赤江瀑 

日ぐらし御霊門 日ぐらし御霊門
赤江 瀑 (2003/04)
徳間書店

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★10/10(多分ネタバレ)

やばい。つかまる。
そんな恐怖と快楽が混濁した感覚を味わっちまいましたよ。
赤江瀑、読んどいて良かった……。
きっかけは『桜』にまつわる耽美(系)小説を探していた時に赤江瀑の名前を見つけ、「そういえば高校時代に創刊したばかりの活クラでフィーバーしてたよなあ」と思い出したことにあります。
赤江瀑作品を読もう読もうと思って早十年。
忘れていたわけではないんだが、きっかけがつかめずに泳がせてました。
最近、新刊文庫案内に赤江瀑の名前を見る機会が多くなり、そろそろ読む時期が来たのだろうかと思った矢先のきっかけと赤江瀑が繋がったので読んでみたのです。

最初に読んだのはは『櫻瀧』
ちなみに、これは短編集です。11作品収録のうちの1本。
後期の作品らしく、2000年5月の発表された模様。
なので、初期の作品とはいくらか変化があるのかもしれませんが、私にはこれが正真正銘一番最初の赤江瀑。

読んでる最中は息苦しくて仕方なかった。
赤江瀑の言葉を借りるならば、『とろとろに溶けてなくなりながら湧いてくる』感じ。
もぞもぞと躰を動かしながら読みすすめてしまう、もどかしくも甘美な味わい。たまりません。
捕まえたとおもったらするりと足下をすくわれたような、どうしようもなく不安定な空間に取り残された浮遊感が癖になりそうです。
最後を読んだ後にもう一度最初から読み返しました。
ごく短い短編ですから、それも苦にならず可能です。
何度も何度も何度でも読み返してしまう。

ただ、最初は少し文体につっかえました。
『。』がなかなかない。
まるでとめどなく言葉が流れ出るままに喋っているような文体に、文章を理解するために頭の中で組み立てなければなりません。
わたしの文章を理解する能力の低さがそうさせるのかもしれませんが。
それも2ページを過ぎたころには全く問題はなくなるのですが。

なんといっても、見所(読み所)は、男の描写。
一言で言うならばなんとも肉感的。
肉の厚みと声の熱さがこんなに淫靡に描かれているなんて、嗚呼。
分析するつもりはないけれど、分析になってしまうのだろうけど、女性の描く耽美と男性の描く耽美はこうも違うのかと思いました。
例えば加賀乙彦の『帰らざる夏』
耽美という例に出すには少し違うのかもしれないと思いつつも、今まで読んできたものは暗黒裏社会物や探偵物ばかりなので知識が少ないせいで申し訳ない。
この『帰らざる夏』を読んだときも、肉を感じました。
暖かく肌に感じる弾力のある肉。
吐息の熱さえも交わって溶けていく産毛が絡み合うような肌で感じる肉。
それと同じく、『櫻瀧』の男の描写も、肉を感じるのです。
指のふしくれだった感触でさえ淫靡。
逆に女性が描く耽美とは、雰囲気に重心を置いてるような気がするのです。
会話のやりとりの中に含まれる熱、眼と眼が絡み合う瞬間、触れそうで触れない距離感、内に秘めた情念がにじみ出る濃厚な空間。
そういうものに淫靡さが多くある気がする。
男性にしか描けない耽美、女性にしか描けない耽美、ああ、どっちも私の心を揺さぶって仕方ないわ……(笑)

それはそうと、腐女子的にラフな言い方をすれば、主人公(もうどっちが主人公だか分からないが)がヤッちゃってます。
そりゃもう『BOY'S ピアス』並の奔放さで見知らぬ男たちと。
これね、その部分をクローズアップして軽く焼直せばモロ『BOY'S ピアス』に掲載されてても全くおかしくないですよ。
『麗人』でもいいか。その場合は別に焼直す必要がない気がする。
純粋に漫画化すればいい(笑)

当初の目的である『櫻の描写』はどうしたって感じの感想文ですが、櫻の描写よりも主人公の白シャツを羽織った裸ばかりが蘇えるばかりで、私としては主人公自体が櫻なんじゃないかとすら思ったほどです。

最後に、どうしてここまで好きになったかってのが、ラストの展開にあります。
ハッピーエンドです。
え、これがハッピーなわけ?という声もあるかと思いますが、五体満足健康優良児の二人がラブラブハッピーで暮らし続けるということだけがハッピーの領域じゃないわけなのですよ。
堕ちた先の正気とも狂気とも現実とも夢ともつかない中で、傍らに相棒がいるということもひとつの幸せなのだと、私にはこれもハッピーエンドなのだと位置づけました。
現実ではそうもいかないです。
死んでしまったなら、霊能力がない限りは思い出はあるもののそれっきり。
それをそれっきりじゃなく描けてしまうことが、物語の強みだよなあとしみじみと実感してしまいました。
ああ、やばい。赤江瀑に傾倒しそう。


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